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アーナルデュル・インドリダソンの北欧ミステリー『湿地』は、静謐な筆致で描かれる本格犯罪小説です。
アイスランドの首都レイキャヴィクで老女が自宅で殺害される事件をきっかけに、刑事エーレンデュルが過去の闇を掘り起こしていきます。
血の匂いと氷の静けさが同居するような世界観は、北欧ミステリーの真髄ともいえるでしょう。
派手なアクションはなく、淡々とした捜査と心理描写が物語をじわじわと締め上げ、読後には、人間の罪と孤独への深い余韻が残ります。
『湿地』は単なる殺人事件の謎解きにとどまらず、社会の底に沈む暴力や、誰にも救われない魂を見つめる作品でもあります。
インドリダソン特有の冷徹で人間的な視点が、アイスランドという舞台の寒さと見事に響き合い、北欧ミステリー好き、特に重厚な人間ドラマを求める読者には必読の一冊です。