終点のあの子

柚木麻子『終点のあの子』は、女子高生たちの繊細な心の動きを鮮やかに描いた短編集です。
学校や家庭、友情や恋愛といった身近な世界の中で、それぞれの少女たちが抱える孤独や葛藤がリアルに浮かび上がります。誰かに理解されたいという願いと、他人を傷つけてしまう恐れ。その相反する感情が、等身大の言葉で丁寧に綴られています。柚木麻子さん特有の温かくも鋭い視線が、思春期の痛みを優しく包み込み、読者に深い共感を呼び起こします。

どの物語にも、決して完璧ではないけれど懸命に生きる“あの子”の姿があります。悩み、傷つきながらも、自分の足で立とうとする彼女たちの姿勢は、読む人に静かな勇気を与えてくれます。大人になっても消えない心の痛みや不安を抱える人こそ、この作品の真意に気づくでしょう。終点とは終わりではなく、新しい自分への始まり。柚木さんの筆が紡ぐラストシーンは、切なさと希望が同居する余韻を残し、読後に温かな光をともしてくれます。

書籍名
終点のあの子
著者
柚木麻子
発行年月日
2012/4/10
おすすめ度
★★★★★